電車の優先席を楽しく過ごす

11年前に左大腿骨を骨折して、しばらく杖生活をしていた頃、電車の優先席前に初めて歩を進めたところ、必ず誰かが席を譲ってくれた。58歳の時であったが、それ以来優先席が私の定位置になってしまった。

11年経った今、足はすっかり良くなったが、歳は充分に老人年齢に達してしまった。時には50歳代と思われる女性に席を譲られたりすると、複雑な心境になる。

そんな時「大丈夫です」などと強がってみると、お互いに気まずい思いをしたことがあった。それ以来譲られたら「ありがとうございます」と丁寧に礼を言って座り、降りる時にも必ずお礼を言うことにしている。

優先席の周りで気になることは、子供連れのお母さんが席を譲られた時だ。2歳、3歳ならともかく、もう幼稚園なら年長さんだというのに、ほとんどのお母さんは子供を座らせる。元気な子供は座らせる必要はない。お母さんが座って子供を前に立たせればいいのだ。

お年寄りが立っているのに平気で座っている若者も目につく。そんな時やんわりと席を譲らせる方法はないものか?「席を譲って欲しい方がいます」みたいな文字が書かれたカードを周りの人に分らないように、そっと差し出すのはどうだろうか?まだ試したことはない。

最も楽しい場面は、1歳前後の赤ちゃんを連れたお母さんと、お年寄りが隣り合った時のやり取りだ。特にお婆ちゃんは、わがひ孫のように「あら、可愛い」とかまい、赤ちゃんも満面の笑顔で、他人のお婆ちゃんを相手に覚えたての言葉を使いながら愛想を振りまいている。

3人+3人の6人の人たちで繰り広げられる人間模様?を眺めていると、しばし雑念を払い楽しいひと時を過ごしてしまう。それは必ずしも会話が無くても結構楽しいものだ。服装や表情にはその人が過ごしてきた人生が垣間見られるものである。